こんにちは、しらうめねずです。
この記事では、数年前に私がアンティークの反物を仕立ててもらった時の体験談をつらつらと書いています。
アンティークの反物を手に入れて着物に仕立てたいと思っている方や、呉服屋さんで仕立てるのはどんな流れなのか知りたい方に、少し参考になるかと思いますので、読んでいただけると嬉しいです。
序:アンティークの反物を手に入れた
ネットオークションで運命の出会い
今の私は、着物を積極的に増やすというよりは、運命の出会いがあったときに迷わず買えようにお金は貯めておいて、積極的に探して回ることはしないようにしています。
しかし、何年か前はフリマサイトやネットオークションを探しまくり、アンティーク着物を漁る日々を過ごしていました。
ある日のこと、ネットオークションで運命の出会いをします。
紫の地に紅色のチューリップが描かれた美しい銘仙に出会いました。

一目ぼれした私は早速入札しようとしましたが、一つ懸念点がありました。
その銘仙は、着物に仕立てられたものでなく、反物の状態だったのです。
着物として着たければ、仕立てなくてはいけません。
そのせいか、シミや汚れが無く綺麗な状態であったにもかかわらず、入札者はほかにいなく、値段も上がっておりませんでした。
仕立てるとなると、お金がかかります。
私は、それまで着物はプレタのものかリサイクルのものしか購入したことがありませんでしたので、お仕立てをするという経験がありませんでした。

お金もかかるし、どこで仕立ててもらえるのか、分からない・・・
とても迷いました。
しかし、どうしてもその銘仙が可愛くて、欲しくて、意を決して入札したのでした。
値段ははっきりと覚えていませんが、一万円もかからず入札できたと思います。
斯くして私はアンティークの銘仙の反物を安価で手に入れたのでした。

届いた反物を見て、うっとり。
買ってよかったと心から思ったのでした
仕立てについて情報を集める
さて、美しい反物を手に入れましたが、仕立てないと着られません。
ハンドメイド材料として使うことも考えられましたが、着尺で状態のいいものでしたので、着物にして着たいと思いました。
私はお仕立てをしたことがありませんでしたので、お仕立てをしてもらえるところを探しました。
お仕立てをしてもらえるところは調べると意外にもたくさんありました。
呉服屋さん、悉皆屋さん、ネットショップにもあります。
反物をお店で買ってそれを仕立ててもらう、という形式が多いのですが、反物持ち込みでも可能なところもありました。
ただ、今回はアンティークの反物でしたので、いろいろと懸念点が多くありました。

アンティークは生地が弱ってることが多いみたいだけど、これは大丈夫かな?

着尺分あるってことだけど、昔の反物だから幅も短いし足りなくなるかも・・・
このあたりを考えると、生地を送るより対面で持ち込みをして、相談できるところが良いと思いました。
お仕立てを依頼するところを決める
対面となるとネットショップは選択肢から消えますので、呉服屋さんと悉皆屋さんを探しました。
実際に行くのでなるべく近いところで、反物持ち込み可能なところ・・・。
呉服屋さんは基本的にそのお店で買ったものを仕立ててくれるという形式だったのですが、持ち込みでも可能とHPに記載されているところを見つけました。
家からも近く、仕立て代や裏地の代金もHPに明記されていて、お手頃価格でした。

でも呉服屋さんって、なんか怖いな・・・
着物初心者あるあるだと思いますが、呉服屋さんってすごく敷居が高いですよね。

行ったら高い着物を買わなきゃいけないのかな・・・

アンティークの反物なんか持ち込んだら嫌な顔されるかな・・・
ものすごく悩んだのですが、そこの呉服屋さんは着物の勧誘がなくお店の人の人柄が良いということで非常に評判がよく、HPもそれが伝わってくる内容でしたので、思い切ってこの呉服屋さんにすることに決めたのです。
先に電話で連絡をしました。

ネットで買った銘仙の反物を仕立てていただきたいです。
結構古いものみたいなのですが・・・

出来るか反物の状態を見ないとわかりませんので、一度持ってきて見せてください。
こうして予約をして来店することになりました。

ドキドキ・・・
破:呉服屋さんに持ち込んで着物に仕立ててもらう
初めて呉服屋さんに行く
予約当日、反物を風呂敷に包んで呉服屋さんに行きました。
個人経営の独立店舗を構える呉服屋さんで、ものすごく緊張・・・。
幸い評判通りに人柄の良いご主人に温かく迎えていただき、反物を見ていただきました。

これは確かに銘仙ですね、だいぶ古そうです。

着物に仕立てるって難しいでしょうか・・・

見た感じ状態はいいですが、場合によっては布が仕立てに耐えられないかもしれません
一度仕立て師に送ってみましょう
と、とりあえず着物に仕立てる方向で進めてもらえることになりました。
相談する
仕立てる方向で話が進みましたので、採寸をしていただき、どう仕立てていくか相談していただきました。
裏地は持っていませんでしたので用意していただき、八掛は見本を見せていただいて色を決めました。
私は袖の振りが長いのが好きなので、袖丈を長くしてもらえないかも相談しました。

袖丈を長くすることはできますか?

昔の反物は今のものより小さいので、生地が足りなくて難しいかもしれません。
出来る限りということでよろしければ、袖丈を長くするように依頼しておきましょう。
反物が小さかったので、ギリギリ着物は作れると思うが、部分部分で別の布を使う可能性があることや、幅も狭いので裄が小さめになることの説明を受けました。

合う襦袢がなかなかないかもしれませんが、大丈夫ですか?

袖だけ自分で作るので、大丈夫です!
(こんなこと言ったら怒られちゃうかな・・・)

なるほど、工夫して楽しんでおられるんですね!
ではサイズが確定したらご連絡しますね!

ホッ・・・
サイズの合う専用の長襦袢を作ることを勧められると思ったのですが、替え袖だけ付け替える方法も否定せず受け入れてくださりありがたかったです。

元禄袖のように袖を丸くすることはできますか?

アンティークの風情が出て素敵ですね。
もちろんできますよ。
こんな感じで、いろいろと希望を聞いていただき、可能な範囲で行って、仕立て作業中何かあったら連絡していただくということに。
前金を払ってその日は終了となりました。
特に急いでいなかったので、納期は三か月程度で、状態によっては遅れる可能性があること説明を受けました。
反物持ち込みにも関わらず、好意的に接してくださり、いろいろと相談に乗っていただけて来店前の心配は杞憂に終わりました。

勇気を出して行ってよかった・・・!
電話がくる
反物を預けて数日経つと、その呉服屋さんからお電話がありました。

以前お預かりした反物なんですが、やはりサイズが小さくて、袖丈は数センチだけしか伸ばせなさそうです。
また、布が足らない部分があって、右側の衽の部分を別の布を使う形になりそうです。

わかりました!
右側の衽は、着た時に隠れる場所のため別の布でも誤魔化しがききます。
なので、反物のサイズが足りない時はこの見えない部分を別の布でつぎ足して着尺を稼ぐのです。

帯で隠れる胴のあたりを別布でつぎ足すこともあるようです
急:完成した着物を受け取る
完成の連絡を受ける
反物を預けてから三か月たったころ、完成の電話をいただきました。

無事に仕立てあがりました!
送ることも可能ですが・・・

直接受け取りに行きます!
近かったしお話も聞きたかったので、予約を取って直接受け取りに行くことにしました。
受け取りに行く
当日行くと早速仕立てあがった着物を見せていただきました。

袖丈は通常の長さより少し長めの52㎝、丸みのある元禄袖にしていただきました。
裄は私のサイズより1cm程度短いくらいで済みました。
衽は似た色の別の布がつけられています。

すごい!綺麗!着物の形になってる~!
反物には一部ほつれのある部分もあったのですが、そこは着るときに隠れる位置にくるようにしてもらっていたり・・・。
アンティークなのにまるで新品のような、綺麗な着物に仕上げられていました。

大満足!
かかった費用
お仕立て代+胴裏代+八掛代+別布をつける特別工程の費用=6万円程度だったと思います。
お仕立て代と胴裏・八掛代はあらかじめHPに記載されていた通りで、特別工程の費用も思っていたより安くしていただいたので予算内で済みました。
そこの呉服屋さんの仕立て代は、ほかの呉服屋さんや悉皆屋さんに比べても安価だったと思います。

正直仕立てや手入れでの儲けは少ないですが、これで着物をもっと着てもらって次の縁に繋げられたら、という思いでこの価格で提供させていただいています。

新品を仕立てることがあったら絶対ここでお願いしよう・・・!
着てみる
持って帰ってから早速家で着てみます。
別布の衽は着たらばっちり隠れ、強い風が吹いてめくりあがるということが無い限り分からなそうです。
サイズは身丈、身幅は自分の体にピッタリ。
裄だけは1~2㎝程度短いですが、アンティークの羽織を着ることが多くて、いつも羽織の裄が足りなくて着物の袖口が出がちだったので、でむしろ良かったです。

下の着物の裄が短い方が、合わせる羽織には困らないんですよね・・・
裏地は新品ですのでアンティークものより強度もあり安心して着られました。
替え袖を縫い付けた
袖丈が少し長いので手持ちの替え袖では合わず、この着物に合わせて替え袖を作りました。
この着物専用の替え袖にしたので着物に直接縫い付けました。
裏地が新品のものでしたので強度の心配なく縫い付けられました。
長襦袢はき楽っくを袖を外した状態で着ています。

筒袖の長襦袢でもOK!
これでいつでも簡単に着られるようになりました。
気に入った銘仙を自分に合ったサイズで、綺麗な状態で着られるなんて、感無量です。

お金はかかったけど、やってよかった!
おわり
以上が、私がアンティークの反物を呉服屋に持ち込んで着物に仕立ててもらった時の流れになります。
反物代も含めるとかかったお金は6万円以上、と、通常のプレタを買ったりリサイクル着物を買うよりはるかに高くつきましたが、この銘仙の着物は一番のお気に入りになりましたので、本当にお仕立てしてもらってよかったと思っています。
人生初めてのお仕立てでしたが、自分で八掛の色を決めて、採寸してもらって、長さも調整してもらって・・・自分のためだけの一枚を仕立ててもらうというのは、現代人の私にとって特別な体験だなと思いました。
思えば洋服でもお仕立てなんて制服ぐらいしかしたことありません。
決める時の楽しさも、仕立て上がりを待っているときの高揚感も、完成したものを見た時の感動も、この時しか味わえないものでした。
それが一目ぼれしたお気に入りの銘仙なのですから、この着物への思い入れは一層強く絶対死ぬまで手放すまい!と思っています。
この反物は自分にとってこれほど価値がある、というくらいお気に入りのものがありましたらお仕立てをしてみるのはどうでしょうか?
きっと最高にお気に入りの一枚になりますよ!